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HOME > 市民医学講座 > 第20回 市民医学講座  『痛みとつきあう』

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第20回 市民医学講座  『痛みとつきあう』

講師 守安医院 守安信明先生

 痛みの感覚は総合感覚で、主観的なもので外部から評価する手段はありません。あくまでそのかたの感覚であり、他者はその方の生活行動からその痛みを類推せざるをえません。
総合感覚という意味は、神経系の内部で痛みの伝達、認知において様々なかたちでの抑制や増幅さらには修飾をうけるからです。痛み感覚を認知する我々の生体内部に、多様な修飾、抑制機能が存在することを考慮すれば、痛みの感覚への対処方法が多岐にわたり、そのひとつひとつに根拠のあることも理解できます。
ペインクリニックでは、痛みの伝わりと神経反射による局所血行障害、酸素欠乏、発痛物資産生を抑制する神経ブロックという手法を用いて診断、治療をおこなっていますが、万能ではありません。

痛みの悪循環と神経ブロック療法

 神経ブロックの意義とは痛みのつたわりをおさえ、神経反射により生ずる痛みの悪循環を抑制し、交感神経機能を遮断することで局所の血管収縮、筋緊張亢進、発痛物資の産生、遊離現象を抑制することにあります。さらに知覚、運動、交感神経を個別にあるいは組み合わせてブロックすることで、いずれの神経に由来する痛みなのかを診断することも可能です。
痛みはまず知覚神経の興奮を生じ、ついで交感神経、運動神経を興奮させ局所の血管収縮、筋緊張亢進から末梢循環障害をおこします。さらに組織酸素欠乏から発痛物質の産生、遊離をひきおこし知覚神経のさらなる刺激をもたらすことになるのです。これが痛みの悪循環という現象で痛み治療上きわめて重要なのです。
神経ブロックは脳神経ブロックと脊髄神経ブロックそして交感神経ブロックに大別され、使用する薬剤は局所麻酔を原則としていますから一定時間の経過でその作用は消滅します(それでは麻酔と同じで作用ができたらまた痛み出すじゃないか?)と思われるでしょうが、痛み医療では痛みの悪循環の遮断がおおきなポイントなので有効に神経ブロック効果が得られたなら、薬剤作用が消滅したあとでも和痛効果は持続して認められます。いかに効果的に痛みの悪循環を遮断するか、それが神経ブロック療法の眼目といえます。

やっかいな痛みにしないために

 痛みの治療上困難なものに、痛みの悪循環が中枢にまでおよんだ場合と痛みの原因が中枢にある場合、そして進行性の癌性疼痛があります。前者の代表は帯状庖診で、体力や免疫力の低下に伴い、水痘感染時神経節と結合したウィルスが再度発生し皮膚、神経、血管の障害をひきおこす病気です。早期に適切な神経、血管系への治療を行わないと、痛み刺激はより中枢側へ波及し最悪の場合局部はまったく感覚がないにもかかわらず痛みがある状態が残ります。
後者では脳梗塞、出血後の感覚障害、脊髄障害後の麻痺部の痛みがあります。これらは感覚の伝達と認知部分の障害にともなう痛み感覚であるため、対処は非常に困難でした。癌性疼痛は癌による器官、神経への障害による痛みですが、持続的で進行により多部位へおよび、原因も多様化してくるのが特徴です。
ペインクリニックの始まりは癌性疼痛をその伝達をおさえる神経ブロックで対処することでした。その治療経験からは痛みというものの成因、伝わり、認知へいたる各過程を理解し、各々に適した対処をせねば痛みは末梢から中枢へ波及し、ときに人格すら障害しうるということが判明したのです。1984年WHO(世界保健機構)による癌性疼痛治療指針発表以降、日本でも麻薬の使用量は飛躍的に増加していますが、麻薬使用に対する理解の低さや懸念のためか(鎮痛の質)という意味では未だ十分とはいえません。癌性疼痛治療では、WHOの方式は根幹をなすだけに、(鎮痛の質)を向上させるためには併用薬剤が必要です。痛みの伝達や悪循環をおさえる神経ブロック療法は補助療法として有用ですが、痛み以外の症状緩和のためには家庭、看護者をふくめたチーム医療が重要になります。
こうした経験をふまえて、ペインクリニックでは痛み解析が進んでいます。痛みの本体が原因にあるのか、伝達にあるのか、認知にあるのかを解析するもので、薬物投与により判断します。それによって薬物療法、神経ブロック療法、理学療法、心理療法そして中枢への治療が選択されます。痛み中枢への波及を抑止するためにも、早期発見、治療は大切です。

最後に

 (痛み感覚)というものが単一要因だけで形成されるものではないこと、対処には構成要素の解析とそれに応じた治療が必要なことがご理解いただけたでしょうか??我慢することは日本人の美徳のひとつですが、ときに体全体に影響をおよぼすことも考えて日常生活改善するようになさいませんか?

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