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第23回 市民医学講座  『小児の感染症』

講師 ありま小児科医院 有馬 和夫

 2002年人口動態調査によれば、合計特殊出生率(女性が一生の間に生む子供の平均数を表した率)が過去最低の1.33%となり、15歳未満の子供の推計人口が15%(2000年 14.7% 1,858万人)を割り込んでしまった今、だれしもが五体満足な子供を産み育てたいと願っております。
 今回、我々小児科医が日常よく診ている主な小児感染症について、免疫学的なアプローチ又は、予防接種、主な疾患の原因・症状・治療・家庭における看病のポイントについて説明したいと思います。

小児感染症の主な分類と問題点

I ウイルス性(Viral)感染症
・抗ウイルス剤 ※妊婦は禁忌
インフルエンザ、水痘など
・中和抗体(一時的、3ヵ月以内の効果)
α-グロブリンによる受動免疫
・予防接種
集団生活(入学、入園)時、母子手帳チェック
ワクチンによる能動免疫。
麻疹、風疹など
II 細菌(Bacterial)感染症
・抗生物質の利用
耐性菌の問題
MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)
PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)
BLNAR(β-ラクタマーゼ非産生ABPC耐性菌)など
・予防接種
ワクチンによる能動免疫
DPTワクチン(三種混合)、B.C.Gなど
III その他の感染症
寄生虫症、真菌感染症、 原虫症、リケッチア感染症など
小児の免疫

乳児は母体由来の胎盤通過可能な免疫グロブリン(IgG)により、生後6ヵ月頃まで伝染病に罹患することが少ないことが知られています。特にジフテリア、麻疹、猩紅熱などは、その良い例です。
 ところが、百日核、結核などでは新生児期から罹患します。母体由来の免疫ではブロックできないからです。その為、我々は生後3ヵ月よりOPTワクチン(三種混合)やBCG接種を早期に実施しています。又、新生児期は、初乳中に含まれる免疫グロブリン(IgA)によりポリオ、溶連菌、肺炎球菌が抑制されていると言われており、母乳を与えることが、新生児期には重要なのです。しかし、母体由来の免疫(移行免疫)は生後4~6ヵ月頃には、ほとんどなくなって無防備な状態になり、それ以後に病気に罹患した際に、自分自身の免疫系を働かせて抗体を産生し、個々の病気の原因となっているウイルスや細菌を抑制し、又、二度と同じウイルスや細菌によって同じ病気にならぬ様に免疫記憶(メモリー)されるのです。これを利用したのが予防接種なのです。

平成13年度 古川市予防接種実施状況

予防接種名 対象者数 被接種者数 接種率(%)
平成12年度 平成13年度 平成12年度 平成13年度 平成12年度 平成13年度
ポリオ 第1回 995 969 777 836 78.1% 86.3%
第2回 1064 1115 774 731 72.7% 66.6%
麻疹   1074 1086 775 835 72.3% 76.9%
風疹 第1期 未就学児 1074 1086 717 784 66.8% 72.2%
第2期 中学1年 850 841 130 119 15.3% 14.1%
三種混合 第1期 初回 1229 1274 832 831 67.7% 65.2%
814 828 66.2% 65.0%
809 836 65.7% 65.8%
追加 1170 1233 710 732 60.7% 59.4%
二種混合 第2期 877 873 485 442 55.3% 60.6%
日本脳炎 第1期 初回 795 760 643 692 60.9% 83.2%
616 625 77.5% 82.2%
追加 788 784 401 505 50.9% 64.4%
第2期 小学4年 819 813 201 234 24.5% 28.8%
第3期 中学3年 890 891 77 92 8.7% 10.3%

結核予防接種年間実績表(未就学児)

  対象者 被注射数 被判定者内訳 BCG接種者
陽性 陰性
平成12年度 1,067 811 2 863 799
平成13年度 1,078 836 3 832 826
風疹ワクチン接種率が激減
(平成7年予防接種義務の廃止以後)

 妊娠初期に風疹に感染すると先天性風疹症候群(難聴、眼疾患、心疾患など先天異常)の新生児が生まれる可能性が高いため、防止目的で人工妊娠中絶が行われています。こうした中絶は風疹が流行すると年間5万件にのぼると推定されています。対策として厚生労働省は平成15年9月30日まで接種率が低いと見られる昭和54年4月2日(今年23才)から昭和62年9月30日(今年15才)までに生まれた人を定期予防接種の対象者としています。(古川市では指定医療機関で無料実施中です。)

急性胃腸炎
  • 原因
    ロタウイルス、アデノウイルス、SRSVなどのウイルス感染による場合と、サルモネラ、キャンビロバクター、病原性大腸菌O-157などの細菌感染による食中毒があります。ウイルス性がほとんどで、乳幼児に多く起こります。
  • 症状
    ウイルス感染による胃腸炎は冬に多く、嘔吐で始まり、続いて腹痛、水様の下痢が起こります。ロタウイルスによるものは、白色から淡黄色の下痢を特徴とする病気です。12月から3月に流行し、生後6ヵ月から2歳に多く見られます。発熱を伴うことが多く、下痢はオムツから流れ出るような水様性で、回数は数回から数十回まで様々です。嘔吐や水分量が多い下痢ため、脱水症になりやすいことが特徴です。
    細菌感染の場合は、食欲不振と嘔吐で始まります。水様便または膿や粘液の混じった便がひんぱんにみられ、時に便に血が混じります。細菌の種類によっては発熱もします。高熱が出たり、血便が出た時は細菌による感染が多いので要注意です。病院に行く時は便のついたオムツを持っていって下さい。便を調べればすぐに診断がつきますし、原因となっている菌の特定もでき、適切な対処法もわかります。
  • 治療
    ウイルス性の急性胃腸炎は十分な水分補給と流動食や消化のよい食べ物による食事療法が大切です。下痢がひどい時には水分だけでなく、ナトリウムやカリウムなどのイオンを補充する事も忘れないで下さい。いちばん使いやすいのが、赤ちゃん用のイオン飲料(アクアライト)です。いざという時のために準備しておきましょう。
    夏の胃腸炎は病原性大腸炎O-157、サルモネラ菌、キャンピロバクター菌、腸炎ビブリオなど細菌感染によるものが少なくないので、早めに医師の診断を受けましょう。細菌感染の場合は抗生物質の投与や脱水症の治療が中心ですが、多くの場合、外来での点滴治療や入院が必要になります。
病原性大腸炎O-157感染症

 大腸菌の仲間には多くの種類の菌があります。その中には人の湯に入ると下痢を起こしてくる湯菅病原性 大腸菌という菌の仲間がおり、現在5種類知られています。O-157はその中の一つです。この菌がとくに危険視される理由は、O-157を始めとする数種の大腸菌はベロ毒素という強い毒素を産生し、人に溶血性尿毒症症候群((1)尿が出なくなり、(2)意識がなくなったり、(3)痙攣が起こる)という重い病気を起こすことがあるからです。O-157はもともとは牛の普通の大腸菌の一種で、牛の糞便から火の通っていない食物介して人に感染します。
最初は牛の肉、レバー、内臓などについているO-157が感染源とされていましたが、次第にこれらのものから他の生の食品(サラダ・イクラなどの水産加工品、生野菜など)にも汚染が広がり、下痢や血便の原因となってきました。また、O-157は食品からの感染だけでなく、人から人へも感染することが分かりました。

 世の中のいろいろな物事が目まぐるしく変わるように、小児医療の分野も非常に変わってきました。大きな病院ではさまざまな機器が備えられ、人手も揃っていて、以前は出来なかった重症の医療や複雑な病気の医療も可能となってきました。
一方、情報化時代となり、お母さん方の知識レベルも高くなり、普通の病気では十分な知識を得て、お母さんが自分で治療を行いたいという考え方が多くなってきました。それで、小児科の診療所ではありふれた病気の家庭での治療の指導や、多すぎる情報の中で心配するお母さん方への説明などが大切な仕事となってきています。
21世紀の医療は「予防医学」と言われております。小児感染症においては、予防接種をきちんと実施し、まず初めに伝染病を阻止する事が、その第一歩であると思います。


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