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第30回 市民医学講座 皮膚疾患のあたらしい治療法

わたなべ皮フ科クリニック 渡邉将也

この度、大崎市医師会のご高配により昨年11月12日に市民医学講座を開催させていただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。

近年少子高齢化社会に伴い皮膚疾患の専門的診療、治療の必要性がよりましてきています。今回はあたらしい治療法として痤瘡(にきび)と疥癬(ヒゼンダニによる感染症)をとりあげました。痤瘡については美容的な意識から関心が高まってきています。2008年10月、あたらしいにきびの外用剤が処方可能になりました。疥癬に関しては高齢者のみならず、介護者、看護者やその家族にかかわる問題になってきています。2006年により疥癬に内服治療が保険適用になりました。これらについてお話していきたいと思います。

まず痤瘡についてですが、痤瘡の定義は:毛包、脂腺系を反応の場とし、面皰を初発発疹とし、紅色丘疹、膿疱さらには嚢腫・結節の形成もみられる慢性炎症性疾患で炎症軽快後に瘢痕を生じることがある-とされています。痤瘡発症のメカニズムとして、男性ホルモン(アンドロジェン)や性ホルモン(テストステロン)により皮脂の分泌が亢進し、種々の因子により毛包漏斗部の角層のバリア機能が障害されることから毛包漏斗部の角化異常と閉塞が起こる。そこで皮脂が貯留し面皰を形成し、P.acnesの増殖が起こりP.acnesが産生する細胞性リパーゼやプロテアーゼなどの酵素により炎症が進行して毛包壁の破壊がおこり炎症が毛包外にまで波及すると結節や嚢腫などを形成します。

痤瘡の治療については近年までは炎症性皮疹に対しての治療として抗菌薬の外用(クリンダマシン、ナジフロキサシン)内服(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)が中心でしたが、2008年10月にアダパレンというあたらしい外用薬が処方可能になりました。このアダパレンは毛包漏部角化を抑制することになり面皰形成を抑制し、ひいては炎症性皮疹も減少させるという画期的な外用薬です。1日1回就寝前に痤瘡の皮疹とその周囲に外用します。副作用としては、角化を抑制させるため皮膚の乾燥や不快感(ひりひり感)、落屑(皮膚が細かくはがれる)、紅斑(赤み)、そう痒感などがみられることが多いのですが、多くは2週間以内にあらわれその後やわらいでいきます。他は大きな副作用はありません。ただし妊娠中や妊娠の可能性がある方、授乳中の方は禁忌で12歳未満には安全性は確立されてはいません。他の治療もふくめ、日本皮膚科学会より痤瘡治療ガイドラインが作成されておりアダパレンは種々の皮疹の状態において推奨度A(行うよう強く推奨する)になっています。抗菌薬とアダパレンをうまく組み合わせて治療していくことにより痤瘡にたいする治療の幅が広がるようになりました。

続いて疥癬について

疥癬はヒト皮膚角質層に寄生するヒゼンダニの感染により発症します。体長は約400μmで卵→幼虫→若虫→成虫と脱皮を繰り返しながら成長します。

卵は3~5日でふ化しその生活環は10~14日です。雄成虫はヒトの皮膚表面を歩きまわったり、皮膚角質層内に穴を掘って潜んでいたりします。雌成虫は産卵に適当な場所で穴をほり雄をまっていて、交尾後、雌成虫は角層内にトンネルを掘り進みながら寿命が尽きるまで4-6週間にわたり1日2-4個ずつ産卵しながらすすみます。なかなか居場所を特定するのが困難です。皮膚から離れるとおおむね数時間で感染力は低下すると推定され、高温に弱く50℃、10分で死滅します。感染については、肌と肌の直接接触が主体ですが、介護者や寝具を介して感染することもあります。感染後約1~2カ月の無症状の潜伏期間(高齢者は数カ月のこともあり)をおいて皮疹などの臨床症状が現れます。角化型疥癬の場合は潜伏期も4-5日に短縮するといわれ集団発生のもとになることが多いです。疥癬の病型と症状は、通常疥癬と角化型疥癬に分けられます。

通常疥癬:雌成虫は患者の半数例が5匹以下とされ、皮疹は3つに大別されます。

  1. 疥癬トンネル:手関節屈側、手掌、指間、指側面に好発。皮膚表面からわずかに隆起し、蛇行して白っぽく見える線状皮疹。
  2. 紅斑性小丘疹:体幹、大腿内側、上腕屈側などに散在し激しい瘙痒を伴う。
  3. 小豆大、赤褐色の結節:外陰部、肘頭、腋窩部、臀部などにみられる。

このうち*1、*3より虫卵、虫体の検出率が高い。

角化型疥癬:皮疹は灰色から黄白色でざらざらと厚く重責した角質増殖が、手、足、臀部、肘頭部、膝蓋部のほか通常疥癬では侵されない頭部、頸部、耳介部を含む全身にみられます。

ダニは100万~200万匹、時に500万匹と多く、感染力が非常に高いです。

疥癬の瘙痒は激しく特に夜間に強い傾向があり不眠となることもあります。この瘙痒は約1カ月の潜伏期間にヒゼンダニの糞や脱皮殻などに感作され、アレルギー反応として生じてくるとされます。

疥癬の検出には、疥癬トンネル、新鮮な丘疹、結節などから摂取し真菌検査と同じ要領でKOH法などで100倍にて観察する。検出率は10~60%といわれており疑わしい患者さんには、頻回の検査が必要です。

治療についてですが、2006年に8月に疥癬の内服治療薬としてイベルメクチン(ストロメクトール)が保険適用になりました。この薬は元来日本において腸管糞線虫症の除虫剤として使用されてきたものです。これが疥癬にも有効であることがわかる疥癬の治療薬となったのです。
イベルメクチンは約200μg/kgを空腹時に1回水のみで内服投与する。原則として1週間後に顕微鏡検査を行い、ヒゼンダニの虫体もしくは卵を検出するか、あるいは新たに疥癬に合致する臨床症状がみられる場合には再投与します。重要な副作用としては中毒性表皮壊死症、肝機能障害、白血球減少などがあります。

イベルメクチン以外で保険適用のあるものとしてはイオウ外用剤のみですが、説明と同意を元に他の外用薬(クロタミトン:オイラックス、安息香酸ベンジルローション、ν-BHC軟膏)を使用する場合もあります。また瘙痒に対して抗ヒスタミン薬内服も行う場合があります。

感染予防についてですが、潜伏期の無症状の人に予防治療を行う場合に集団発生の規模、治療の対象者について一定の基準はなく、予防治療は保険適応にはなっていません。施設においては通常疥癬では隔離は不要で角化型疥癬では隔離が必要となっています。このような予防対策とともに皮膚の検診を定期的におこない、異常があれば皮膚科医に診察依頼することが望まれます。


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