市民医学講座
第24回 市民医学講座 『ストレス関連病とストレス解消法』
講師 古川駅前岡本クリニック 岡本康太郎
1 はじめに
現代はストレス社会と言われようになりました。それによってストレスに関連した病気がたくさん見えられるようになりました。ストレスが多くなりますと、またストレスが長く続きますと、こころやからだに変調が現れることがあります。それらは、(1)パニック障害、(2)強迫障害、(3)身体表現性障害、(4)うつ病などであります。
しかし、このような病気では死に至ることはありません。専門的に適切な治療をじっくりと受けさえすれば改善されます。神経科、心療内科でよく遭遇するストレス関連病とストレス解消法の中で最もすぐれている内観についてご説明いたします。
2 パニック障害
突然、窒息感、めまい、脱力、冷感などの全身症状、動悸、呼吸促迫、悪心、発汗、頻尿などの自律神経症状のほか、ふるえ、こわばりなどの筋緊張症状、非現実感(離人感あるいは現実感喪失)などが起こります。不安感は身体症状の出現によって一層強められ、死、自制心の喪失、発狂などの二次的な恐怖が起こってきます。
患者さんは突然襲う動悸や息苦しさのため、今にも死にそうな恐怖感に襲われ、苦悶状態を示してうずくまり、大騒ぎをして医師のもとに運ばれてくることが多くみられますが、パニック発作の持続はふつう数分で、医師の診察を受けるころには発作はおさまっていることが多いようです。パニック発作のさいに呼吸促迫のため過呼吸がみられることがあります。これを過呼吸症候群といいます。
3 強迫障害
自分で戸締まり、火の始末をしておきながら、それを忘れたのではないかと言う考え(強迫思考)が起こってくると、どうしてももう一度家に戻って確かめないと気がすまなくなる(強迫行為)。また、一度手を洗ったが、手の汚れが落ちていないのではないかと気になって(強迫思考)、何度も手を洗わないと気がすまなくなる(強迫思考)。このような儀式が繰り返し何度も出現します。このように、常同的な形で繰り返し患者の心に浮かぶ観念で苦悩をもたらすもの。また、何度も繰り返し行われる行為であります。
4 身体表現性障害
繰り返しさまざまな身体障害を訴え、何度検査しても検査所見は陰性で医師がその症状には、身体的基盤がまったくないと保証するにもかかわらず、医学的検査を執拗に要求するもの。患者には周囲の注意を引こうとする演技的な行動が認められることが多く、心気障害、身体表現性疼通障害、嚥下障害、心因性掻痒症などがあります。
5 うつ病
ストレスからくるゆううつ気分、不安、無気力は誰もが経験するものです。うつ病はこうして心の状態が長期間回復せず、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。身体の変調としてはさまざまな症状が現れてきます。
うつ病は気の持ちようで起こるものではありません。ストレスなどにより、セロトニンやアドレナリンといった脳内神経伝達物質の働きが悪くなることにより起こると考えられています。
- うつ病は適切な治療を受けていればほとんど治る病気です。
- 病気であるからまず休養が大切。
- 治療には抗うつ薬の服用と精神療法が必要。
- 不眠には睡眠剤が必要なときもある。ただし、不眠はうつ病の一症状に過ぎない。よって、うつ病の不眠には抗うつ剤が適切であれば睡眠剤は必要なし。
- 激励はしない、重要な決定は後回しにする。飲み会、旅行、など誘わないこと。
6 ストレス解消法(内観)について
- 内観と外観:通常私達は外観をおこなっています。つまり自分の価値観や都合で物事を見ています。自分の都合で物事を見ていると、つまり外観ばかりしていると、問題が生じてきて気持ちがムシャクシャ、イライラすることが多くなります。
- 柳田鶴声氏の名言
人は多人に善を求め(外観)て心苦しみ、己の悪を認め(内観)て心安らぐ - 内観とは?:吉本伊信により開発された精神療法。
親子、夫婦、嫁姑、男女間のトラベルの解決に最適であり、心身症、神経症、遷延性うつ病、摂食障害、不登校などの心身医学、精神医学に適しています。 - 内観の方法:自分にとって身近な人、例えば母、父、兄弟姉妹、先生などの人々との関わりを(1)してもらったこと、(2)して返したこと、(3)迷惑をかけたこと、の観点から年代順に瞑想し回想する。内観をすると、感謝、喜びの涙とともに燃える気力と幸せの気持ちが出現してきます。
- 地下鉄サリン事件:元オウム真理教信者で事件の被告人Hに対して、日本内観学会員A弁護士によって内観が施用された。内観によって尊師、尊師という強固なマインドコントロールが解け、素直な気持ちが現れ、異例とも思われる極刑を免れた。驚いたことに、被告の行為で犠牲になられた被害者の方々や、そのご遺族の方々が被告の反省、慟哭、悔悟の涙により大いに慰められたといいます。
7 おわりに
以上、代表的なストレス関連病の簡単な説明をいたしました。また、ストレスがあり苦痛な場合には、抗不安薬、抗うつ病などによる改善も十分に期待できますが、反応が得られず苦慮される場合には内観をお勧めいたします。