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第12回 市民医学講座 『おしっこの悩み』

講師 渋谷皮膚科泌尿器科医院 渋谷昌良

 第12回市民医学講座のタイトルは、古川生活学級の代表の方々と相談し身近な問題でありながら、人前で話しにくい「おしっこの悩み」特に排尿困難、頻尿、尿失禁に決定致しました。当日は地域の保健婦さん、保険指導員さん、一般市民の方々、看護学校の生徒さんと272名の参加を得まして無事終了出来ましたことは、佐藤会長、青沼副会長、小野寺広報委員長さん、医師会、製薬会社の方々の御協力のお陰と感謝申し上げます。

排尿困難

 排尿困難には、排尿開始までの時間の延長(遷延性排尿)と排尿時間の延長(苒延性排尿)とがあります。排尿障害の検査には、病歴、理学的検査、 X線検査(IVP・DIP・UVG・ZG・CT等)、内視鏡検査、膀胱内圧測定、尿道内圧測定、尿流量測定、外括約筋筋電図が行われます。排尿困難をきたすおもな病気として、1)膀胱では、神経因性膀胱、膀胱頸部硬化症、膀胱結石、膀胱異物。2)前立腺では、前立腺肥大症、前立腺癌、前立腺結石、前立腺炎。3)尿道では、尿道狭窄、尿道結石、尿道腫瘍、尿道異物、尿道憩室。4)その他として精神的要因、薬の副作用(感冒、喘息、不整脈、パーキンソン病、うつ病などの薬の一部)などが考えられます。

「頻尿」とは

 「頻尿」とは、排尿回数が異常に多い状況をいい昼間に8回以上、就寝後に2回以上トイレに行くことです。頻尿をきたすおもな病気には、1)尿量の増加によるものとして、糖尿病、尿崩症、萎縮腎、慢性腎炎。2)膀胱容量の減少したものとして、萎縮膀胱、膀胱腫瘍、膀胱結石、膀胱血腫、子宮筋腫、子宮癌、妊娠末期。3)残尿があるため有効容量の減少したものとして、前立腺肥大症、前立腺癌、膀胱頸部硬化症、神経因性膀胱、尿道狭窄。4)膀胱・尿道・前立腺への刺激にもとづくものとして、急性膀胱炎、急性前立腺炎、膀胱異物、膀胱腫瘍、膀胱結石、前立腺肥大症、神経因性膀胱。5)精神的要因にもとづくものとして神経性頻尿があります。

「尿失禁」とは

 「尿失禁」とは、時と場所を選ばず自分の意に反して尿が漏れてしまうことを言います。年をとった為に自然に起るのではなく種々の原因によって生じる一つの症状です。尿失禁自体は、かなり古くから知られていまして、いまから二千年くらい前の中国の「黄帝内経」という最古の医学書に「膀胱咳」という言葉が出ています。尿失禁が最近までかえりみられなかったのは、一つは命にかかわる病気ではないことと、女性の患者さんに多くみられ恥ずかしさが先立ち、なかなか受診されなかった為です。しかしQuality of lifeを図るための医療に患者さんと医師の双方から関心を持たれるようになって、最近は増えてきました。

アンケート調査

 尿失禁のアンケート調査(北里大学病院泌尿器科調べ)で健康診断に来られた20~60才代までの446人の女性のうち、約半数(48.2%)が尿失禁の経験を有していました。尿失禁はくしゃみ、咳、縄とび、大笑い、走ることなどが誘因となっておりました。尿失禁の原因としては、膀胱の感染や骨盤底筋群の弱化、骨盤内臓器の手術(子宮・直腸の腫瘍・筋腫)、脳卒中、パーキンソン病、脳出血、脊髄損傷や脊髄の病気、肥満、糖尿病、薬剤の副作用(降圧剤、利尿剤、睡眠剤、鎮痛剤、抗うつ剤、喘息薬)などが考えられます。
 
 このうち腹圧性尿失禁(Stress urinary incontinence)は、尿失禁の約7割を占め、坐ったり、寝ている時はほとんど漏れないが、急に走ったり、縄とびをしたり、咳、くしゃみがでるたびに漏れるものであります。原因は、多産、難産により骨盤底筋群のゆるみと、筋力低下によるものです。腹圧が尿道を締めるようにうまく働かないために漏れるものです。有効な対策としては、骨盤底筋体操と薬物療法(交感神経刺激薬)がありますが重傷の場合には、Stameyの膀胱頸部挙上術が行われます。

次に切迫性尿失禁(Urge urinary incontinence)又は急迫尿失禁は、おしっこをしたいと思うと、トイレまで間に合わない、下着をおろそうとしている間に出てしまう状態で尿失禁の2~3割を占めます。原因としては、脳梗塞の後遺症、パーキンソン病、膀胱炎、前立腺肥大症などが考えられます。膀胱内圧測定で無抑制収縮波のような神経因性のファクターがあるとき、あるいは非常に強い炎症が存在する時などにみられる状態です。これは薬物療法や手術で治すことが出来ます。

次に、溢流性尿失禁は、膀胱に尿がたまっているが排尿困難のために残尿が多くなり、あふれ出るように漏れる、たえずダラダラ出るものをいいます。原因としては、神経因性膀胱、前立腺肥大症、子宮癌、直腸癌術後(末梢神経障害)が考えられます。治療としては、残尿をなくす為に自己間欠導尿(1日に数回細いカテーテルを自分で挿入して尿を出す)や留置カテーテル法があります。又薬物療法(抗コリン剤)や手術もあります。

次に全尿失禁(Total urinary incontinence)はDrytimeがないものです。これは尿管が膣に開いている(尿管異所開口)とか膀胱膣瘻が出来ている(いずれも尿道外尿失禁)とか、前立腺癌や前立腺肥大症の術後に尿が絶えず漏れている(医原性尿失禁)ものです。
それから痴呆があり排尿に関して無頓着となっており尿失禁を起こしている痴呆性尿失禁があります。又前ぶれもなく、あっという間もなく、いきなり尿が出てしまうものに反射性尿失禁があります。これは神経因性膀胱(とくに脊損)によくみられます。

おしっこの悩みは5人に一人の割合で持っており、特に腹圧性尿失禁をよくするために自宅でできる骨盤底筋体操があります。6つのバリエーションがあり(1)あおむけに寝て足を肩幅に開き、体の力を抜いて肛門を締める(2)四つんばいで肘を立て新聞を読む姿勢(3)机にもたれ全体重を腕にのせる(4)坐った姿勢でゆっくり肛門と膣を締める(5)背筋をつける(6)腹筋をつける-などです。

ともあれ、おしっこのことで水分を制限する必要はありませんし尿失禁は常に管理することができますのでかかりつけの医師に相談しあきらめないで尿失禁を克服して明るい生活を送って下さい。

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